防火区画の種類について

建築基準法

共同住宅を設計するうえで検討しなければならない防火区画には次のような種類があります。

建築基準法の区画

①面積区画
②竪穴区画
③異種用途区画
④排煙区画
⑤高層区画(建物11階以上の場合)
⑥特別避難階段免除の区画(建物15階以上の場合)令122条   
⑦非常用エレベータ免除の区画(建物高さ31m超え)令第129条の13の2        

東京都建築安全条例の区画

①都安8条区画 
②都安11条区画(建物高さ31m超え)
③都安19条の区画

消防法の区画

①共住区画
②令8区画

以上を押さえておけば共同住宅を設計するうえでの区画はたいていカバーできます。            
区画の種類によっては扉などの開口部は防火設備を特定防火設備や遮煙性能を有する設備にする必要があるので設計者がどこにどのような種類の区画を配置するか決めていく必要があります。

では、実際の設計において、どのように区画を設定していくかの手順を紹介します。

①最初に一番分かりやすい異種用途区画を設定します。

共同住宅の設計の場合
①共同住宅部分と駐車場部分の区画
(駐輪場は共同住宅扱い)
②共同住宅部分と店舗部分の区画
が異種用途区画となります。

区画の扉は特定防火設備で遮煙性能付。
区画貫通ダクトはSFDを設置。電気も必要です。
区画取り合い部のスパンドレルは不要です。

②つぎに竪穴区画を設定します。

共同住宅の設計の場合
①EVシャフトと共用廊下の部分の区画
②屋内避難階段と共用廊下の部分の区画
③屋外避難階段と共用廊下の部分の区画
が竪穴区画となります。

区画の扉は防火設備で遮煙性能付。 
区画貫通ダクトはSFDを設置。電気も必要です。
区画取り合い部のスパンドレルは必要です。

つぎに面積区画を設定します。

法床面積が発生する部分を1500㎡毎に区画するのが面積区画です。共同住宅の場合は主に法床面積が発生している各階の共用廊下の部分がEVや屋内避難階段を介して他の階と面積的につながる場合は1500㎡毎に区画が必要になります。

例えば16階建ての共同住宅で法床面積が発生している屋内共用廊下とEV部分の各フロアの合計面積が100㎡の場合、2階~16階までの15層分の100㎡の面積がEVシャフト(この場合のEVの扉は竪穴区画の仕様の防火設備の場合)を介してつながり1500㎡になります。この1500㎡がさらに1階のエントランスホール等の共用部とつながると1500㎡を超えてしまうので1階部分のEVの扉は面積区画する必要があるということになります。

区画の扉は特定防火設備で遮煙性能不要です。
区画貫通ダクトはFDを設置。              
区画取り合い部のスパンドレルは必要です。

つまり先ほどの例だと1階部分だけEVの扉の仕様を竪穴区画の防火設備の遮煙性能付扉から遮煙性能付の特定防火設備にして面積区画を形成すれば面積区画は成立します。

④そして最後に排煙区画を設定します。

排煙区画は共同住宅においては緩和規定により基本排煙設備は設置しないことが多いです。
その緩和を受けるために区画を設定します。建築基準法施行令第126条の2 1項一号の場合
内装制限無しで共同住宅における排煙免除の緩和規定を受けられます。つまり共同住宅の共用部分の100㎡区画(住戸部分に関しては200㎡区画)を行えば排煙設備は不要になります。

区画の扉は防火設備で遮煙性能不要です。 
区画貫通ダクトはFDを設置。

⑤11階以上の共同住宅の場合は11階以上の部分に対して高層区画を設定します。
 1.住戸部分

共同住宅の住戸部分に関しては200㎡区画 

区画の扉は特定防火設備で遮煙性能不要です。
区画貫通ダクトはFDを設置。 
区画取り合い部のスパンドレルは必要です。

⑤11階以上の共同住宅の場合は11階以上の部分に対して高層区画を設定します。
 2.共用部分

共同住宅の共用部分に関しては100㎡区画 

区画の扉は防火設備で遮煙性能不要です。
区画貫通ダクトはFDを設置。     
(仕上げ・下地準不燃の内装制限で200㎡区画の場合は特定防火設備で遮煙性能不要です。区画貫通ダクトはFDを設置。)
区画取り合い部のスパンドレルは必要です。

⑥特別避難階段免除の区画(建物15階以上の場合)令122条

共同住宅の共用部分に関しては100㎡区画 共同住宅の住戸にあつては200㎡毎に特定防火設備の区画で特別避難階段免除

⑦非常用エレベータ免除の区画(建物高さ31m超え)令第129条の13の2 

高さ31mを超える部分の階数が4以下で100㎡毎に特定防火設備(遮煙不要)の区画で非常用エレベーター免除

廊下に面する窓で開口面積が一平方メートル以内のものに設けられる法第二条第九号の二ロに規定する防火設備での区画でもOKです。

以上が共同住宅における建築基準法の区画になります。
上記の内容を表にまとめるとこのようになります。 

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これで終わらないのが区画設定の大変なところ。
次回は東京都建築安全条例の区画を設定していきます。

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