つづいて共同住宅を設計するうえで押さえておきたい東京都建築安全条例の区画をみていきましょう。
まず都安8条区画です。こちらは”直通階段からの避難経路”の規制になります。
法又はこの条例の規定により主要構造部を耐火構造としなければならない建築物で、地階又は三階以上の階に居室を有するものは、避難階における直通階段から屋外への出口に至る経路のうち屋内の部分(以下この項及び次項において「避難階の屋内避難経路」という。)を、道路まで有効に避難できるように、屋内の他の部分と耐火構造の壁又は法第二条第九号の二ロに定める防火設備で令第百十二条第十八項第二号に定めるもので区画しなければならない。
東京都建築安全条例 第八条
共同住宅で直通階段を設置した場合、避難階において、その直通階段からの避難経路が屋内を経由して道路に避難する場合は、その避難経路とそのほかの部分を区画しなければならないという法文です。区画は防火設備で遮煙性能付き扉で区画(法第二条第九号の二ロに定める防火設備で令第百十二条第十八項第二号に定めるもののこと)が必要です。ただし避難経路上にある扉(例えば避難経路となっている風除室の扉など)の区画は不要です。ここで注意ですが避難経路を守る防火区画は避難経絡が面積発生していなくても建物下を通る場合は区画が必要です。
つぎに建物高さが31m超えの建物は都安11条区画の検討が必要です。こちらは”特別避難階段等の設置”の規制になります。
建築物の高さが三十一メートルを超える部分を第九条第二号(※他の用途省略)に供する場合には、その部分に通ずる直通階段のうち一以上を特別避難階段とし、その他のものを屋外に設ける避難階段(以下「屋外避難階段」という。)としなければならない。
東京都建築安全条例 第十一条
東京都で31mを超える共同住宅(都安第9条第2号)の場合直通階段のうち一以上を特別避難階段にする必要があります。また二以上の直通階段がある場合は屋外避難階段(令123条の第2項)の設置を義務づけています。
2 前項の規定は、主要構造部が耐火構造である建築物が、次に掲げる部分を除き、床面積の合計百平方メートル(共同住宅の住戸にあつては、二百平方メートル)以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(~中略~)で区画され、かつ、前項の直通階段が、令第百二十三条第一項の規定に適合するもの(屋内と当該階段の階段室とが直接外気に開放されている廊下を通じて連絡するものに限る。)又は同条第二項の規定に適合するものである場合には、適用しない。
東京都建築安全条例 第十一条
2項では特別避難階段の緩和条件が書かれていて①共同住宅の住戸部分に関しては200㎡毎に、その他の共用部等の部分に関しては100㎡毎に特定防火設備で区画しかつ②その建物の直通階段を屋内避難階段(令第123条第1項)(ただし開放廊下に接続したものに限る)もしくは屋外避難階段(令第123条第2項)とした場合は特別避難階段の設置が免除されます。これは免除区画なので先程と違って面積発生している部分通しを区画します。面積発生していない部分に接する開口部の区画は不要です。
一 階段室の部分、昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)又は廊下その他避難の用に供する部分で、耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたもの
東京都建築安全条例 第十一条
二 自転車置場又は自動車車庫若しくは自動車駐車場(泡消火設備その他これに類するもので自動式のもの及び排煙設備を設けたものに限る。)の部分で、耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたもの
3 建築物が開口部のない耐火構造の床又は壁で区画されている場合においては、その区画された部分は、前二項の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。
共用部の100㎡区画に関して
1号では階段室やエレベータ―昇降路は区画対象から免除また、避難経路となる廊下部分もその他の部分と特定防火設備で区画されていれば100㎡毎に避難を阻害するような区画は不要となります。2号では自動車駐車場が100㎡を超える場合、泡消火設備、水噴霧消火設備、粉末消火設備で自動式のもの(移動式粉末消火設備は不可)および排煙設備(自然排煙可)を併設で100㎡区画の免除となりますがコストがかなりかかる緩和条件ですので採用しづらい条件です。その場合計画上許されるなら3号のいわゆる基準法令117条第2項の別棟区画を共同住宅部分と形成できれば駐車場部分は100㎡区画の対象から外すことができます。ただし別棟なので共同住宅部分と駐車場部分は屋内で行き来できることはできません。駐車場から一度外部(屋根や庇のない青空部分)に出て共同住宅に入るというかたちをとらなくてはなりません。3号は共同住宅に付随する100㎡を超える店舗にも有効です。
最後に都安19条の区画
2項 (~省略~)窓先空地(~省略~)から道路、公園、広場その他これらに類するもの(~省略~)までを幅員二メートル(住戸等の床面積の合計が二百平方メートル以下の場合にあつては、一・五メートル)以上の屋外通路(屋外に十分開放され、かつ、避難上有効に区画された通路を含む。)で避難上有効に連絡させなければならない。
東京都建築安全条例 第十九条
窓先空地からの避難経路がピロティ等の屋内通路を通る場合そのピロティ部分の避難経路と屋内の部分を耐火構造の床、壁又は特定防火設備で区画する必要があります。これも避難経路を守る防火区画は避難経絡が面積発生していなくても建物下を通る場合は区画が必要です。
以上都安の区画をまとめるとこのようになります。
以上が共同住宅を設計する場合に東京都建築安全条例で検討する必要がある区画でした。
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